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映画『虐殺器官』 感想のようなもの

本日、待ちに待った虐殺器官を観てきました!

公開予定だった2015年10月から早1年4ヶ月。
ちゃんと劇場で観られる日がきて良かった。
今までの2作がそうだったように、今回も先入観なくフラットな状態で観られるように、原作はもちろん数々のレビューや紹介記事すら読まずに臨みました。
このシリーズは映画を初見にしたかったから。
 
 
虐殺器官を観終えてとりあえずの感想としては、やっぱり3作連続で公開してほしかったなー!ってこと。
やっぱり伊藤さんの話って連続性があって、それぞれ単体としてもちろん成立しているし、物語同士が干渉しているわけではないから、それぞれを楽しむのに影響はないんですけど、こういうところにつながりがあるとか、同じ世界線上なのかもとか、発見をしながら観られるとより楽しかったんだろうなって。
ハーモニーは私にとっては結構分かりづらい作品だったんですが、虐殺器官の世界を知ったうえで、ここからハーモニーにつながるんだと思って観たら、もう少し理解が追いついたのかもしれない。
 
お話としては結構すっきりしてて分かりやすかったです。
とはいえ、どちらかというと玄人向けの作品だなという印象はあって、なんというかテンションが割とフラットなまま進んでいくから、すごい盛り上がりを期待して観る感じではなく、じっくり物語と向き合う感じというか。
ざっくりと物語の大筋を追うと、クラヴィスという主人公がジョン・ポールという対象を追い、その言葉に翻弄され、思考し、自分の意思としてのラストを選ぶ、みたいなお話(観てないとさっぱり分かんないですねw)
ぱっと見の印象はミリタリーだけど、観ているうちに人間の物語だとすぐに分かる。
虐殺器官は、言葉で思考をコントロールする世界でした。
戦闘員が戦場で感情を常にフラットに保っているのも、痛みは分かるけど感じないのも、ジョン・ポールが虐殺を起こしているのも、全部言葉の力。
どれだけテクノロジーが進んでも、人間は言葉に惑わされる。
でもそれこそが人間なんだと言われているような気がしました。
 
シリーズ全部そうなんだけど、一回観ただけだとなかなか理解が追いつかないですね。
次は原作を読んで、その上でもう一回観に行きたい。
今回も原作からの改変やカットされたシーンや要素があるみたいなので、そのあたりも楽しみにして原作を読みたいと思います。
それから据え置いていたハーモニーも読もうかなぁ。
 
あと忘れてはいけない、役者さんの話。
やはり何といっても櫻井孝宏さんですね。
こういう役をやらせると本当に上手いなぁと感動します。
雰囲気としては、サイコパスの槙島さんに似ている感じ。
教授のような、詩人のような、ついいつまでも聞いていたくなるような語り口。
静かな中に、穏やかな中に、どこか普通じゃない雰囲気を醸しながら淡々と罪を犯していくあの感じ。
罪を罪としてとらえながらも悪いとは思っていないというか、悪いと分かっているけれどやめる気はないというか、人間の感情や思考の複雑なところを表現するのが上手くて。
たまらないです。本当に、さすが。
主演の中村さんももちろん、さすがです。
ああいう雰囲気の主人公はピカイチですよね。今の若手にああいうお芝居できる人はそうそういない気がします。
(雰囲気としてはBLのデッドロック(だったかな)の時とすごく似ている気がする)
脇を固める役者さんもベテラン勢が多く、若手で参加しているのも梶くんと石川界人くんと実力のある方々で、安心して観られました。
シリーズ通していい役者しか使ってないからなぁ。さすがだよなぁ。
 
 
私は屍者の帝国がとても好きなんですが、虐殺器官とそういう点でつながりがあるなと感じます。
屍者の帝国は、魂の存在は何かというのを、言語と思考から探そうとする物語でした。
思考は言語に先行する、魂があって思考が生まれてから言語が生まれる、というフライデーの理論をワトソンが証明しようとする物語でした。
虐殺器官は、言葉が思考を制御する物語でした。
正反対のようであり、同じことを言っているようであり、また全然違うことを言っているようであり……複雑。
これは伊藤さんと円城さんの違いなのかもしれませんね。解釈が違うというか、言葉が違うというか。
そういう切り口でそれぞれの作品を観るのも楽しそうな気がします。
 
屍者の帝国もまた読みたくなってきたなー。
虐殺器官を読んだら、ハーモニーと、屍者の帝国と、刊行順に読んでみるのもいいかもしれない。
 

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